「社長の言葉はなぜ届かないのか?」竹村俊助

企業アカウントに無理やりキャラ付けするよりも、経営者個人が前に出て「どんな考えを持っているのか?」「どれほど商品に情熱を持っているのか?」を伝えるほうがよっぽど効果的ですし、本質的です。

人は人に反応する生き物。

SNSでは特にそうです。

会社だからといって、個人をぼやかさずに、なるべく人が見えるように発信してください。

とにかく「何を」の前に「誰が」を固めなければ何を言っても聞く耳を持ってもらえません。

まずは「自分は何者なのか」を伝えることです。

最初から事業内容やビジョンの話をしても読んでもらえません。社内の人すら読んでくれないかもしれません。

そういうときにまず大事なのが「誰が書いているのか?」「あなたは誰なのか?」を明確にすることです。

ただし、この「自己紹介」も「私は●●と申しまして、こんなことをしています」という普通の自己紹介だとあまり読んでもらえません。

その工夫とは「結果的に自己紹介になるようなコンテンツにする」ことです。

特に創業者であれば、会社を作る前後の「創作秘話」は最強のコンテンツです。

なぜ、リスクを背負ってまで会社を作ろうと思ったのか?その際に一番苦労した部分はどこか?どうやって人を集めたのか?

「創業秘話」が知られると「会社のファン」が増えていきます。

「人を集めるのが大変だった」「四畳半の部屋から始まった」「残高が底をついた」などベタかもしれませんが、そういった創業期の苦労話に人は惹かれるものです。

「会社設立以来、順調に成長し、顧客もこれだけ増え、●年後に上場も果たしました!」

これだけだとただの自慢に見えてしまって、読者はあまり魅力を感じません。

下手をすると逆ブランディングになる危険性もあります。

それより今の時代は、苦労話や失敗談を書くことをおすすめします。

苦労話、失敗話は面白いのですが、さすがに「じゃあここに依頼しよう」「採用に応募しよう」とはなりにくいかもしれません。

よって会社が上手くいくようになったターニングポイント、ブレイクスルーな出来事もセットで書きましょう。

SNSの向こう側には、仕事や人生で上手くいかずに悩んでいる人がたくさんいます。

失敗を恐れてチャレンジできずにいる人も多くいる。

そういう中で「苦労したところからどう立ち直ったのか?」「失敗してその苦境をどう打破してきたのか?」というストーリーを書けば、そういう人たちを励ましたり、勇気を与えたりすることができます。

何もなかったところから、どうビジネスを作り上げていったのか?

それを多くの人にシェアすることは人類を前に進めることにもなると思うのです。

苦労話や失敗話も含めてぜひ書いてみてください。

実はビジョンだけをまとめてもそこまで読んでもらえません。

そこに「人」が見えないので、あまり魅力的ではないのです。

そこで、ビジョンを語るときは「原体験」と共に書くことをおすすめします。

推される企業になるにはどうすればいいのか?

まずは事業・プロダクトを磨くことです。当たり前ですが、一番重要。

2つ目は「その事実を伝える」ことです。どこで差別化するかというと、その事実を伝えること。キチンと認知を獲得することです。

さらに付け加えるなら、自画自賛しないことも大切です。あくまで自分たちのことを素直に語る。事実ベースで伝える。

「知らない会社」から「知っている会社」になる。

ポイントは、何が何でも読者との接点を作ることです。

読者との接点を作りたいときは「役立つ」という角度から切り込んでいくのも効果的な手段です。

仮にまったく知らない人であっても何か自分に役立つことを教えてくれる人のコンテンツであれば読みますし、それはだんだんと信用に変わっていくのではないでしょうか。

ノウハウを発信するときのコツは「読んでもらおう」と力むのではなく「どう書いたら画面の向こうの人が喜んでくれるかな?」「多くの人の役に立てるかな?」というスタンスでいることです。

信頼を得るために必要なのは、過去を語ることです。

具体的には、これまでにご紹介した経営者の半生や創業秘話、社史などを語りましょう。

過去を語ることは信頼には繋がるかもしれませんが、「好き」とか「これからも一緒にいたい」と思わせることまではできません。

未来を語るとは、企業で言えば「ビジョンを語る」ことです。

「この会社は何を成し遂げようとしているのか?」「この会社はどこへ行こうとしているのか?」「この会社はどんな世界を作ろうとしているのか?」といった未来を語り、採用候補者も同じ未来を描けることができれば、採用に繋がりますし、ミスマッチも減るはずです。

あなたのコンテンツをつぶさにチェックしている人などいないので何度同じことを書いてもいいのです。

万が一炎上したらどうすべきなのでしょうか?

答えは「すぐ削除してすぐ謝る」です。

こちらにどんな主張があったとしても、炎上した時点で何かしらの誤解を生んだわけです。それは事実なので、まずは削除です。

よく「削除してはいけない」と思っている人がいますが、削除しないとどんどん広がっていきます。

もちろんスクショが出回ることもあるのですが「削除した」という事実が大切なのです。

読まれるコンテンツのタイトルとはどういうものでしょうか?

それは「そこから会話が始まるタイトル」です。

SNS時代は「まず世に出して、そこから改善していく」のが正解です。

最初に見られるのはせいぜい数十人から数百人くらいでしょう。それくらいの人に見てもらって、そこでのフィードバックを受けて改善していく。

小さなマーケットで「実験する」くらいの意識のほうが気軽に楽しくアウトプットできますし、結果としてコンテンツも磨かれていきます。

「発信はスタート」のマインドで、楽しくアウトプットしていきましょう。

SNS時代は「最高のものを皆様にお届けします」という意識ではなく「まず現段階のものをお見せしますね!みんな感想ちょうだい!」くらいの意識でいたほうがいいかもしれません。

自社サイト内でブログを書いたり、自社のオウンドメディアを作ったりして、そこで発信してしまうこともNGではないのですが、このやり方だとオフィシャル感が出すぎてしまい読まれなくなってしまう可能性が高いのです。

「会社っぽさ」が前に出てしまうと、特に学生や採用候補者などには敬遠されてしまいます。

その点でnoteは絶妙にオフィシャル感が薄れるので、多くの人に発信するツールとして最適です。

noteが「街」なら、𝕏は「道」です。

𝕏も同時に発信することで、読者がnoteの記事にたどりつくまでの「道」を作るのです。

書いたnoteを紹介するときに「書きました!」という一言だけを添えて𝕏にnoteのリンクを投稿する人がいますが、それだとなかなか読んでもらえません。

noteの一番面白い部分を𝕏のコンテンツとして出してしまうことをおすすめします。

noteを書いてみたものの、ぜんぜん読まれないというのはつらい。

そこで、𝕏でネタをいくつも発信しておいて、その中でウケがよかったものをnoteにまとめるわけです。

すると、まったく読まれないという事態は回避できます。

𝕏がマーケティングの場になる、とはそういうことです。

note1本のイメージは「連続ドラマ」ではなく「1本の映画」です。

もしくは「1話完結型のドラマ」です。

どの回から見ても面白い、一話完結の意識でまとめてみてください。

ラストに告知や宣伝を入れるのはどうでしょうか?

「採用強化中です!エントリーはこちら!」といってリンクが貼られていることはよくあります。

これには「シェアされづらくなる」というデメリットもあります。

人は「読後感」によってシェアするかどうか、他人に勧めるかどうかを決めます。

よってラストに告知や宣伝があることで、シェアする気持ちを萎えさせてしまう可能性があるのです。

コンテンツがよければ、読者は勝手に会社や経営者のことをフォローしたり検索したりしてくれます。

そもそも経営者の半生や社史をまとめた時点で価値は十分あるのです。

特にnoteはストック型のコンテンツとして価値があります。

公開して数週間後にじわじわ伸びていくこともありますし、1年後にインフルエンサーの人が拡散してくれて急に読まれ始める、なんてこともあります。

経営者は「インフルエンサー」になろうとする必要はありません。

経営者は会社のことを伝える最強のスポークスマンになりえます。

広報の方ももちろんスポークスマンなのですが、個人がフィーチャーされるSNSにおいて、会社を代表する人が自ら発信することには計り知れない効果があります。

社長の発信はあくまで「手段」です。目的ではない。

インフルエンサーになるために発信するわけではないのです。

会社のプレゼンスを高める、ブランドを高める、社員のモチベーションを高める、採用の量と質を上げる…そういった「目的」を果たすために「社長の発信」が効果的なのであればやらない手はありません。

対外的な発信を意識しなくても、まずは「社内向け」に発信してみてもいいと思います。

𝕏やnoteで社内向けの内容をあえて外部に発信することで、回り回ってインナーに効く、というケースはよく見かけます。

何か問題が起きたときも、会社としてのオフィシャルな見解をすぐに発信できます。

不祥事だったり、悪い評判や噂だったりというのは、たいてい第三者が「尾ひれ」をつけています。

公式の発信が即座にできると、企業側の意図が丁寧に伝えられます。

経営者の𝕏は、会社まわりのあらゆるニュースを世に出すための「発射台」なのです。

𝕏への投稿は頻度としては1日に3~4回くらいが適切でしょう。

あまり多すぎてもウザがられてしまうからです。

逆に少なすぎるのはNGです。最低でも1日1回は投稿して、フォロワーに忘れられないようにしましょう。

𝕏を発信するときのポイントは「自分とは切り離す」ということです。

自意識が邪魔をすると、途端に投稿できなくなります。

「これを言ったら、あの人にどう思われるだろう?」「これを言うと自慢になるんじゃないか?」と考え始めると手が止まります。

スタンスとしては「自分のアカウントのプロデューサーになる」のがおすすめです。

自分と自分のアカウントを切り離して、𝕏のアカウントをプロデュースするつもりで運営するのです。

僕も自分のアカウントを客観的に見て「この人が何を発信したらウケるだろうか?」「この人がフォロワーに提供できるのは何だろうか?」という視点で投稿を考えています。

プロデューサーになれば「何を発信したらいいか分からない」ということは減るはずです。

ちなみにプロデューサー視点は、自分のメンタルを守るためにも有効です。

アカウントを客観的に見ておけば、多少嫌なことを言われても「確かにこの言い方は誤解を生むな」といったように冷静に判断できます。

僕はよく𝕏のアカウントを「雑誌」にたとえます。

𝕏の運営は、雑誌の編集に似ています。

リポストだらけのアカウントは「広告だらけの雑誌」と同じようなものです。

オリジナルのコンテンツはほぼなくて、自社の告知や他人のコンテンツばかり、そんな雑誌に読者はつきません。

「抽選」や「ハッシュタグをつけて投稿するキャンペーン」といった施策はあまりおすすめしていません。

これらは一瞬フォロワーが増えるかもしれませんが、企業の発信としては本質的ではないからです。

リアルでも抽選やキャンペーンばかりやっているようなお店はあまり信頼できません。