「ドリルを売るには穴を売れ」佐藤義典

マーケティングってそんなに複雑な理論じゃなくて、お客様が「どの店に行くか」を決めるプロセスを考えることだよ。

それがお客様の心の中で起きていることだからね。

マーケティング脳を鍛えるには、自分の身の回りから学べばよい。

何かを買ったとき、買わなかったときに「なぜこの商品を買ったのか?」「なぜこの店で買ったのか」を考えていけばよいのだ。

その裏には、売りたい人のマーケティングがあったはずだ。

売り手は業界のライバルと意識していても、顧客は「ハンバーガー業界」にこだわっているわけではない。

自分の求める欲求を満たすことができれば、顧客にとって業界の垣根などどうでもよいことなのだ。

差別化を図る際には、通常は手軽軸・商品軸・密着軸の中から一つに絞る。

ここで気を付けなければいけないのは、ある軸に特化したとしても、他の軸でも平均以上の価値を提供しなければいけないということだ。

あくまでも一般論だけど、商品軸で差別化する会社は、開発部が強くて職人タイプの人が多い。それが会社の強みだからね。とにかく良いモノを作りたいからだよ。

逆に、密着型で差別化する会社は、営業重視で、愛想のいい人が多いね。差別化の軸と、社員の性格はかなり連動するんだよ。

あなたは時計を売っているのかもしれない。

しかし時計を買う顧客は「時間がわかる」という価値を、そして「ステータス」「優越感」などを買っているのだ。

そのような「価値」まで含めて「製品・サービス」と考えた方がよい。

職人タイプの人は「よいものさえ作れば売れる」とよく言う。

よいものを作ることはたしかに必要条件ではあるが、十分条件ではない。そもそもそれが本当によいものかどうかは、買って使ってみなければわからないのだ。

したがって、製品・サービスがよいかどうかは、使ったり買ったことがない人には関係がない。

買ったことがない人には、よいだろうと「感じてもらうこと」が重要なのだ。

4Pに限らないことだが、マーケティングで重要なのは「一貫性」だ。

吉野家の牛丼という「製品」が良いか悪いかは、それだけでは決められない。

あの価格で、駅前で、あのスピードで提供されるからいいのだ。

重要なのは、一貫性だ。一貫性があれば、4Pは相互に絡みあって大きな力となる。

魂は細部に宿る。お客様は見えるもの「だけ」から判断する。

だから、お客様に見えるものには、徹底的にこだわる。

マーケティングがしっかりしている会社では、このようにベネフィット、ターゲット、差別化、4Pという流れが非常に美しい。強い戦略は美しいのだ。

それぞれの要素も必要だが、それ以上に重要なのが各要素間の流れるような美しさや一貫性なのだ。

妻が言うにはな、「おいしいだけのレストランなんていくらでもあるわよ。そんなんじゃ今の目が肥えたお客さんは満足しないわ。上質感でもいいし、ワクワク感でもいいの。なんていうかな、そこに行く、特別な理由がなきゃ、二度目はないわ」って言うんだ。

自分のことで考えてみれば当たり前だ。

ディズニーランドのレストランの味は、別に何ということはないが、あの雰囲気の中で家族と食べたからこそおいしかった。いつも帰りによる飲み屋は、それなりにおいしいが、本当に求めているのは味よりも、女将とのくだらない馬鹿話をすることなんだな。

一店成功させるだけじゃダメだ。チェーン展開することを考えた店舗運営の仕組みを作れ。

私の経験から、人が大きく伸びるには3つの条件があると思う。

1つ目は、自分の実力を超えるゴールが設定されること。

2つ目は、自由に働けて自分でその責任を負うという自由と責任のセット。

3つ目が、支えてくれる指導者(メンター)の存在。