「完全教祖マニュアル」架神恭介

あなたのすべきことは、①社会の基準で幸せになれない人を見つける、②反社会的な基準を与えてその人を幸せにする、ことだと考えてください。

社会に反する新しい価値基準を提唱し、「負け組」の人を「勝ち組」へと変えてハッピーにすることなのです。現行社会のシステムや価値観から外れた人たちに、別ベクトルでの存在意義を与えるのが宗教の大切な役割です。

 

彼らは一体何を求めているのでしょうか。言うまでもありませんね。現世利益です。

「どうすれば人を日常的にハッピーにできるのか」という点について考えてみます。これを実現する一つの手段としては、「その人が良いと思うことを素直に実行させる」というものがあります。

 

新興宗教は硬直化した社会に対して、反社会的な鉄槌を下す役割もあるのです。

宗教の役割は社会に迎合することではなく、むしろ、社会通念に逆らってでも、正しいと信じることを主張することなのだと考えてください。

 

仏教なら輪廻転生、イスラム教ならムハンマドの使徒性。仏教もイスラム教も、実はこれらの「前提」さえ納得すれば後はすべて論理で話ができるのです。

「前提」を踏まえた上での論理的思考。これが哲学です。ここが美しいとインテリが酔う。仏教哲学もイスラム哲学もキリスト教神学も多くのインテリが参加しています。

 

信者たちに一般社会と異なる習慣を与えることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

たとえば、信者たちに「自分たちは特殊な組織に所属しているのだ」という実感を持たせることができます。彼らは自分たちに課せられた特殊なルールを外部と比較する度に、自分たちの特異な立場を実感できるわけです。

 

なにも馬鹿正直に「私がやっているのは宗教です」などと言う必要はありません。「私は科学的な話をしているのです」としれっと言い放ってやればいいのです。

普通の人は新興宗教の言っていることは頭から疑ってかかりますが、科学だと言い張りさえすれば、無条件で信じるところからスタートしてくれるのです。

とにかく科学的な体裁をとることが大事なのです。どうせ一般人は科学的検証なんて絶対しません。

 

教団本部を作る際は、ディズニーランドや伊勢神宮のような「一歩入るだけで別世界」のニュアンスを出せるよう頑張ってください。この「別世界」感覚があれば、それだけで日常からの飛躍が狙えます。

信者たちは教団本部に出入りする度に神聖な気持ちを抱き、さらにはその施設での活動やその施設を作った教団にまで神聖さを感じることでしょう。

 

あえて寄付をすることには多くのメリットがありますが、これの最大のポイントは、あなたの懐が一切痛まないということです。

だって、元々、信者たちのお金ですからね。あなたは何も失うことなく、他人の金で名誉と尊敬だけを得ることができるのです。

 

権威に従うのはとても楽ちんでハッピーなのです。

親や教師には反抗するのに、みのもんたには従順に従うのは、そこに本人の意志があるからです。あなたの宗教に自発的に入った人なら、同じ理由であなたの権威にも喜んで服従するはずです。彼らにはそれが一番楽ちんなのですから。

信仰を持った人に「信仰を持って良かったことは何ですか?」と尋ねると、「しっかりとした価値観が持てるようになった」「自分の中に一本芯が通ったから、ブレることがなくなった」「何かに迷っていても、自分には宗教という指標があるからそこに立ち戻れる」といった返事がよく返ってきます。

これは言ってしまえば「自分で考えることが減ったのですごく楽だ」ということです。