「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」橘玲

以下、気になった部分を抜粋

子供はみんな、集団の中でいかに目立つかというゲームをしている。

そのときにいちばん効率的なのは、自分が持っている様々な能力の中で比較的優位にあるものに全資源を投入することだった。

この進化論的に最適な戦略を確実に実行するために、ぼくたちは好きなことに夢中になるように遺伝的にプログラムされて生まれてきた。

能力というのは、好きなことをやってみてみんなから評価され、ひとより目立つことでもっと好きになる、という循環の中でしか「開発」されないのだ。

 

愛情や友情が支配する政治空間では「お前は何者なのか」が常に問われ、集団のルールを知らなかったり、空気を読めなかったりすると仲間から排除されてしまう。

それに対して貨幣空間は、ありのままの「わたし」を受け入れてくれる。

愛情や友情に不器用で社会に適用できなかったひとたちも、貨幣空間ならなんの問題もなく生きていける。

なぜなら、「わたし」が誰かはどうでもいいことだから。

 

高度化した知識社会の「スペシャリスト」や「クリエイティブクラス」は、市場で高い評価を獲得することによって報酬を得るというゲームをしている。

彼らがそれに夢中になるのは、金に取りつかれているからではなく、それが「楽しい」からだ。

 

ある調査によれば、人生の満足度を7点満点とすると、アメリカのビジネス誌「フォーブス」に載った大富豪たちの満足度の平均は5.8だった。

アフリカのマサイ族は、ケニアとタンザニアに住む半遊牧民で、必要最小限のものしかない貧しい暮らしをしている。同じ調査で、彼らの人生の満足度は、5.4だった。

目の眩むような大金は、ひとをたった0.4ポイントしか幸福にはしてくれないのだ。

 

高度化した資本主義社会では、論理・数学的知能や言語的知能など特殊な能力が発達したひとだけが成功できる。

こうした知能は遺伝的で、意識的に「開発」することはできない。

ところが一方で、金銭的に成功したからといって幸福になれるとは限らない。ひとの遺伝子は、金銭の多寡によって幸福感が決まるようにプログラムされていないからだ。

ひとが幸福を感じるのは、愛情空間や友情空間でみんなから認知されたときだけだ。

だったら幸福への近道は、金銭的な報酬の多寡は気にせず、好きなことをやってみんなから評価してもらうことだ。

「好き」を仕事にしたいのなら、ビジネスモデルを自分で設計しなくてはならない。

グーグルやアップルやその他さまざまな新時代のサービスが、そのためのインフラを用意してくれている。それを活用して幸福の新しい可能性を見つけられるかどうかは、君次第だ。