「勝つ投資 負けない投資」小松原周 片山晃

プロである機関投資家にも弱点があります。

それは機動力のなさです。

彼らのルールの一つが、流動性の乏しい銘柄には投資しないというものです。

もう一つは、「フルインベストメント」という考え方です。ほとんどの投資信託やファンドでは運用資産のうち現金で持っておけるのは数%までとルールで定められています。

まだ日の目を見ていない銘柄を先に仕込んでおいて人気が出るのを待つ。下がると思えば売っておいて、安くなってから買い直してリターンを得る。そうした自然な投資行動をとれる機動力こそが、個人投資家が機関投資家に大して優位に立てる唯一の武器なのです。

投資はその人の性格がものすごく出ます。

また、育ってきた環境や今の家庭の状況などのバックグラウンドによってリスクに対する考え方も大きく異なります。なので自分にはどんなやり方が向いているかというのは自身で見つけるしかありません。

低PERや低PBRの株を見つけることにあまり意味がないように、一人の人間が行える程度の単純な数字の分析にも価値はありません。

プロの機関投資家と同じ分析をしようにもその前提となる情報もソースもまるで足りていないのです。ですからその土俵で戦うことは極力避けたほうが良いと考えています。

僕としては今後ますます陳腐化していくであろう単純な数字の分析よりも、その先にあるストーリーを読むことに投資の付加価値を見出そうとしています。

多くの人は損をすることが悪いことだと考えているかもしれません。

でも本当に一番ダメなのは、上がりもせず下がりもせず、ただ時間だけが経過していってしまうことなのです。

目論見が明確に外れ、これは損切りしたほうが良いなという判断ができるなら、また次の新しいアイデアを考えて取り返せばいいだけのことなのでそれはそれでいい。

しかし、買ってから何も動きがなかったというのでは、少なくとも株価的には次の行動を起こすための材料がないわけですからポジションの動かしようがありません。

株価が含み益か否かは関係ありません。上がるはずだと思えば持ち続ければいいし、やっぱり違ったかもしれないと思ったら売る。それ以外の選択肢はないのです。

売買に参加する投資家が多い、つまり出来高が多いほど、その銘柄についていろいろな情報が調べつくされて将来の予想がされているため、株価には「認識ギャップ」と呼ばれる、まだ織り込まれていない材料がなくなっていくのです。

これとは逆に、日本株、特に中小型株などは、ウォッチしている投資家が少ないため、情報の効率性がとても低い状態で放置されている傾向が多数あります。

会社の業績が伸びるか伸びないかを決める要素の8割以上は、社長次第といっても過言ではありません。

事業戦略も、財務戦略も、投資決定も、社員の成長やモチベーションも、すべては社長という一人の人間のセンスに依存しています。

社長に求められるものは業界の専門的な知識ではなく、イノベーティブな組織づくりなどのソフト面にあります。

私の印象では日本の上場企業の7割ほどの会社の社長が、社長業としての責務を全うしていません。

会社を見るときにはトップがどのような人物かを必ずチェックするようにしましょう。

調べても、何一つ社長の人となりを知る手段が見つからなければ、株主の方を向いていない会社といえるので、投資をする必要はありません。