「物語思考」けんすう

どうしてぼくがこんなにハウツーが好きかというと「マニュアルどおりにやれば、だれでも上手くいく可能性が高い」からです。

何かを成功させるためのコツは、「最初は自分の頭で考えない」ことです。

多くの場合、すでにノウハウは存在するので、まずはそのとおりにやってみるんです。

本当に自分の頭で考えないといけない領域までは、なるべくハウツーを使って最短距離で進むのがおすすめです。

どこかで絶対に自分の頭で考えないといけないシーンはやってくるので、そこまでは最短距離で人の知識に乗っかった方がいいはずです。人類はそうやって進化してきたので。

「この先にきっといいことがあるから今は我慢する」という感覚で取り組んでいるわけではありません。

どちらかというと、「日々、うれしいことや喜びも嫌なことや苦労もどちらも無数にある」ことを、そのまま受け入れているような感じです。

そのような喜びと来るしっみが混ざり合った日常こそが、もっとも充実感があり、幸福度の高い過ごし方だと、ぼくは捉えています。

この本では、「物語思考」の考え方をインストールしてもらうことで、ゴールにたどり着くかどうかよりも「今の状態が楽しい」「今やっていることが充実している」と感じられる人が増えるといいなと考えています。

みんな「やりたいことがない」と悩んでいたり「仲間が見つからない」という障害があったり、「チャレンジするのが怖い」という不安を持っていたりしますよね。

でも「物語思考」で考えるだけで、いい意味で他人事感が出て、多くのことを楽しみながらクリアしていけるようになります。

物語思考だと、チャレンジや失敗をしないほうがリスクになります。

なぜなら、何も起きない人生は物語としてぜんぜんおもしろくないからです。

ネズミを複雑な迷路に入れて、最短距離をどのくらいで見つけられるか?というものです。

20日かかるネズミもいれば、3日で正解に辿り着くネズミもいる。

じゃあ、それは何の差か?というとシンプルに「迷路に入れられた最初の1,2日でどれだけ多く失敗したか」らしいんです。

学習の初期に、どれほど無駄なルートを通ってたかが決めてなんだとか。

失敗は成功の母みたいな言葉があると思うんですが、正確には「学習初期に、無駄なルートをたくさん通ったほうが成功する」なのかもしれません。

だいたいの個人の性格の違いなどは誤差みたいなもので、ほとんどは状況や環境によって生み出されているもの、と考える方が合理的です。

個人が成功するかどうかは、その人の高い能力や才能のおかげではなく、時代などの環境によって役割が付与されただけなのではないかと思っています。

社会は「みんなが原理にしたがった強力行動をとっている」ほうが効率的だし、利益が大きいです。

「みんなこうしているから自分もこうしよう」ということってめちゃくちゃありますが、あれを上手く活用できればコストを抑えて社会をよくできるはずなんです。

人間の行動も「ある一定の量を超えると、一気に連鎖的に反応が起こるよ」という意味で「限界質量」という言葉を使っています。

ものすごく直感的に言うと「多くの人がやっていることの側につきたい」ということですね。

魅力的な会社には「ただでもいいんで働かせてください」という人がよく来たりします。

これは最悪です。何も知らない人を教育するにはものすごいコストがかかりますが、それがお金ももらわない無責任な状態で入ってきたら目も当てられません。「ラッキー、無料の労働力だ」とすら思ってもらえないんです。

なのでコミュニティに入るには、力関係的に自分が上になる状態を作るのがおすすめです。

その社長は数年でとてつもなく会社を進化させて業界にものすごいインパクトを与えました。

「すごく大変そうに見えるんですが、どうやったんですか?」と聞いたときの答えが「クイックウィンを狙う」だったんです。

クイックウィンとは何かというと、「最初は絶対に勝てるところで勝っておく」という意味です。

まずは簡単にできる改革だけをするらしいんですね。

たとえば「社員全員が挨拶をするようにする」「毎日掃除をするようにする」というのを徹底的にやったらしいのです。

とにかく「やれば確実に成果が上がって喜ばれること」をやっておくのです。

あの人が来たおかげでいろいろ助かっているよね、と言われるようなことをします。

そのように「小さいことを、だれよりも上手くやる」ことで実績と信頼を積み、仲間を増やします。

小さな勝ちをいくつか積み上げて信頼が集まってから、より大きなことをするようにすると、新しい環境になじみやすくなるので、参考にしてみてください。

想像してもらうと分かると思うんですが、山登りで大事なことは「山登りが楽しいか」のほうであり、山のゴールはそこまで重要ではないんです。

特に人生においては「ゴールには到達したけどそこまでの道のりは最悪でした」となってしまっては、本末転倒です。

人生では幸せなほうが重要であり、ゴールはそこまで大事ではありません。

ぼくは「物語は転がっていれば面白い」という考えを持つことをおすすめしています。

どこに到達したか、どのゴールを目指しているかよりも、「プロセスが充実しているほうがいいよね」という考えです。

SNS社会になったこともあり、失敗でさえもみんなに見てもらえる「コンテンツ」になります。

失敗というコンテンツが人々から応援されて、仲間やお金を呼んでくることすらあります。

物語を転がす際に、失敗をすることは決してマイナスではない、という考えをぜひ持っていただければと思います。