「人を動かす」D・カーネギー

およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。

相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。

20世紀の偉大な心理学者ジグムント・フロイトによると、人間のあらゆる行動は、2つの動機から発する。すなわち、性の衝動と、偉くなりたいという願望である。

アメリカの第一流の哲学者であり教育家でもあるジョン・デューイ教授も、同様の事を、少し言葉を替えて言い表している。つまり、人間の持つ最も根強い衝動は、重要人物足らんとする欲求だというのである。

深い思いやりから出る感謝の言葉を振りまきながら日々を過ごす。これが、友を作り人を動かす秘訣である。

自分の長所、欲求を忘れて、他人の長所を考えよう。

そうすれば、お世辞などはまったく無用になる。嘘でない心からの称賛を与えよう。相手はそれを心の奥深くしまい込んで、終生忘れないだろう。

深い思いやりから出る感謝の言葉を振りまきながら日々を過ごす。

これが、友を作り、人を動かす秘訣である。

人間は、他人のことには関心を持たない。ひたすら自分の事に関心を持っているのだ。朝も、昼も、晩も。

フランクリン・ルーズヴェルトは、人に好かれる一番簡単で、わかりきった、しかも一番大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということを知っていたのである。

我々は、子供や友人や使用人の肉体には栄養を与えるが、彼らの自己評価には、めったに栄養を与えない。

牛肉やジャガイモを与えて体力をつけてはやるが、優しい褒め言葉を与えることは忘れている。

相手が喜んで答えるような質問をすることだ。相手自身のことや得意にしていることを話させるように仕向けるのだ。

あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の100倍もの興味を、自分自身のことに対して持っているのである。中国で100万人が餓死する大飢饉が起こっても、当人にとっては、自分の歯痛のほうがはるかに重大な事件なのだ。

人間は、誰でも周囲の者に認めてもらいたいと願っている。自分の真価を認めてほしいのだ。小さいながらも、自分の世界では自分が重要な存在だと感じたいのだ。見え透いたお世辞は効きたくないが、心からの称賛には飢えているのだ。

だから、人にしてもらいたいことを、人にしてやろうではないか。では、それを、どういう具合にいつ、どこでやるか?いつでも、どこででも、やってみることだ。

人と話をするときは、その人自身のことを話題にせよ。そうすれば、相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる。

我々には、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には、反発を覚える。

どこかいいところを見つけて、それに敬意を表してやると、たいていの者はこちらの思い通りについてくる。

要するに、相手をある点について矯正したいと思えば、その点について彼はすでに人よりも長じていると言ってやることだ。

人を変える必要が生じた場合、次の事項を考えてみるべきだ。

①誠実であれ。守れない約束はするな。自分の利益は忘れ、相手の利益だけを考えよ。

②相手に期待する協力は何か、明確に把握せよ。

③相手の身になれ。相手の真の望みは何か?

④あなたに協力すれば相手にどんな利益があるか?

⑤望み通りの利益を相手に与えよ。

⑥人に物を頼む場合、その頼みが相手の利益にもなると気付くように話せ。