「苦しかったときの話をしようか」森岡毅

サラリーマンの外にも世界があること、資本家として成功すれば桁違いのリターンがあること、その資本家の世界は自分とはかけ離れた別世界ではないこと。

それらのことを君にはキャリアの最初から知っておいてほしい。

肝心なのは、資本家の世界を射程圏に見据えるパースペクティブを君が持っているかどうかだ。

私はグレン・ガンペルと出会ってUSJに転職した30代半ばまで、そのことに気付けなかった。

リーダーとして成さねばならないことは何か?

それは、誰に嫌われようが、鬼と呼ばれようが、恨まれようが、何としても集団に結果を出させることである。

自分の周囲の仕事のレベルを引き上げて、成功する確率を上げることに、達すべきラインを踏み越えることに、一切の妥協を許さない。

そういう厳しい人にならねばならないということだ。

私は、ナイスな人であろうとすることをやめた。

森岡さんってどんな人?と聞かれた部下や周辺の人が、もうどれだけ罵詈雑言を述べたってかまわない。

ただ一言、「結果は出す人よ」と言われるようになりたい。

人格の素晴らしさで人を惹きつける人徳者である必要もない。

ただ「ついて行くと良いことがありそう」と思ってもらえる存在であればいい。

結果さえ出れば、彼らの評価を上げることができるし、彼らの昇進のチャンスも獲得できるし、給与もボーナスも上げることができるのだから。大切な人たちを守ることができるのだ。

結果を出す人間であることを分からせれば、勝ち馬に乗るメリットが明確になるので、人々は私につくてくるようになる。

彼らの自己保存の目的に適う存在にならなければならない。

そのメカニズムは極めて冷淡で明確、それがプロの世界の法則といえるだろう。

トレーニングや人材育成に定評があった当時のP&Gでさえ、少なくない数の新人が「できない自分」を乗り越えられずに潰れていった。

会社に出て来られなくなった、心を病んだ、何らかの理由をつけて退職していった。

それらの大半の原因は「できない自分」との向き合い方が分からなかったからだと思う。

潰れないためには、最初から肩の力を抜いて、最後尾からスタートする自分をあらかじめイメージして受け入れておくべきだ。

そこから本当の努力を積み重ねられる自分であるかどうか。

つまり「今日の自分は何をどう学んで昨日よりも賢くなったのか」その1点を問える自分であればいい。

「できない自分」ではなく「成長する自分」として、自分だけは自分自身を大いに認めてあげてほしい。

不安とは、本能を克服して挑戦している君の勇敢さが鳴らしている進軍ラッパのようなものだ。

不安であればあるほど、君は勇敢なのだ。

もう一つ、不安は未来を予測する知性が高い程より大きくなる。

不安であればある程、君の知性が真摯に機能しているのだ。

挑戦する君の勇敢さと知性が強ければ強い程、よりくっきりと映し出される「影」こそが、実は不安の正体だと理解しよう。

人の特徴をよく理解して、特に大事にしなければならないのは、自分と似た人間ではない。

人は無意識に自分と似た人間を過剰に評価する傾向がある。

それは自己保存の脳が、自分自身を認めて肯定したいバイアスを常にかけているからだ。

むしろ自分とは違うタイプの特徴を持つ人を意識して探して、その価値を認めて、その価値が炸裂する場で輝かせて、それらの人を敬意をもって大切に扱わなくてはならない。