会社は孤独を埋める場所ではありません。
人間関係の寂しさを職場で埋めようとしていないでしょうか。孤独がイヤなのであれば、友達を作るなり、趣味に没頭するなりしてください。
「社員の誕生日を覚え、誕生日カードを渡す」「昼休みにみんなで遊べるように卓球台やダーツを用意する」
これがまさにリーダーとしてやりがちな失敗例です。
「職場の雰囲気が良くなると、成果が出るんじゃないか?」と感情をマネジメントしようとしているからです。
実際は逆です。
雰囲気がよくなるから成果が出るのではなく、成果が出るから結果的に雰囲気がよくなるのです。
部下たちの様子を見て、やる気を出させてあげたり、頑張る理由を与えたり、つねに「モチベーション」のことを考えてしまうと、リーダーは失敗します。
結果を出せない部下が、「モチベーションが上がらないんですよね」と言い訳ができる状況を作ってしまったら、そのチームは終わりです。
何度も言うように、リーダーの役割は、部下たちのモチベーションを上げることではなく、成長させることです。
リーダーがやるべきなのは、部下たちから情報を吸い上げて、それを元に判断を下すことです。
リーダーは、チームの責任を負っている立場なので、意思決定に必要な情報だけ取れればいい。上司が部下より現場に詳しい必要はないのです。
きちんと組織が回っていれば、能力に関係なく、全員が成長できます。
リーダーは成長する機会を与えることしかできません。
辞めさせないために部下に合わせる必要は、まったくありません。
リーダーがもっともやってはいけないのは、離脱を防ぐために「成長以外のもの」をエサにして繋ぎ止めようとすることです。
「簡単に達成できるように目標を極端に下げる」「1週間に1度は食事に連れて行き、悩みを聞く」「社員旅行をご褒美にする」
このようなマネジメントは、全く効果がありません。
本来のリーダーとしての役割を果たしているのであれば、「辞める・辞めない」はあなたの責任でもなんでもないのです。
ルールを守るとき、もしくは守らせるとき、そこに個人的な感情を加えてしまうと問題が起こります。
「あの人は目標を達成しているから遅刻をしても良い」「中途で入ってきた人だから前の職場のやり方でも良い」
このように例外を作ってしまうと、チームや組織は非常にもろくなります。
「姿勢のルール」とは、「できる・できない」が存在しないルールのことです。
「挨拶をしましょう」「会議には遅れず参加しましょう」などが姿勢のルールにあたります。
これらには「やろうと思えば誰でも守ることができる」という特徴があります。
姿勢のルールは、リーダーに対する姿勢を表すものです。
「できる・できない」が存在しないので、守らない人間は「意図的に守っていない」ことになります。
姿勢のルールを徹底して守らせることが、組織のリーダーとしての一丁目一番地にあたります。これができない人にリーダーの資格はないのです。
ルールはそのチーム、組織ごとに違って構いません。極論を言えば、何でもいい。「できる・できない」が存在しないルールを守らせる、ということが重要です。
それにより、「上司と部下」「リーダーとメンバー」の関係をつくっていきます。
「姿勢のルール」が存在しない組織では、組織に対する帰属意識が働きにくくなります。
ただし、ルールが部下ごとに異なるのはNGです。
ルールは「全員が守れる範囲」で統一すべきです。
どうすれば、彼らはコミュニティへの帰属意識を持つのでしょうか。そこで必要になってくることこそが、「ルールを守らせること」です。
「姿勢のルール」を設定し、守らせるのです。
それでも、「私はそのルールは守りません」と反発する人は、その組織、あるいは会社には合わない人なのだと、識学では考えます。
ルールを守らない人がいた場合でも、その人だけ特別扱いしてはいけません。
ルールを設定し、ルール通りに動いているかどうかだけに集中してマネジメントするのです。
そうすることで、目の前の人間関係の問題を考えなくなり、メンバーたちが迷わずに業務を遂行できるようになります。
リーダーが部下にルールを守らせるとき、大事なポイントが2つあります。
1つめが、「主語を曖昧にしない」ということ。
もうひとつが、「誰が何をいつまでにやるかを明確にする」ということです。
この2つを満たしていないルールは、すべてが「ダメなルール」です。
ルールで決まっていれば、手伝う手伝わないの問題は発生せず、「やると決まった人がやってください」と一言だけ指摘すれば済みます。
ルールのある組織に「気遣いでやる仕事」という概念はありません。
他の部署を見るようにしました。そこで気付いたのが「自分とは真逆で無機質なタイプのマネジャーの方が上手くいっている」という事実でした。
チームが成長するかどうか。
それは、リーダーが感情的に寄り添うことをやめられるかどうかが鍵を握っているのです。
「言わなくても分かってもらえるだろう」「察してくれるだろう」
そういったマネジメントはもうやめにしましょう。
無法地帯で空気を読むことを強制してはいけません。
最後に、あえて厳しいことを言うと、「姿勢のルール」すら守らせられない人に、この先、大きな仕事は成し得ません。
ルールは一度だけ口で言ってもダメです。
・一斉メールで伝える
・全員が見られる共有ファイルを作る
・ルールをまとめて紙で配布する
など、後から確認できるようにしましょう。
その際、
「私がそう決めたので、以後、守ってください」
など、責任の所在が自分にあることを明確にします。
「今までの習慣を変えたくない」「新しいことは覚えたくない」というような反発に負けないよう、堂々と伝えましょう。
ルールを運用し始めたら、問題が起こってくると思います。
部下から出てくる問題は、「情報」として受け止めます。あくまで情報です。
全員の顔色をうかがってすべてを満たすようにルールを変更する必要はありません。
リーダーであるあなたが情報を元にして、最終的な判断をします。
このときに、「嫌われないかな」「辞めちゃわないかな」と、感情的になってしまうと、リーダーの軸がブレます。
言ったもの勝ちの状況を作らないように注意しましょう。
そして、もうひとつ大事なのは、「最初に決めたルールが絶対だ」としないことです。
ルールが間違っていたときあ不備があったときは、潔く認めて、新しくルールを決めるべきです。
自分が部下だったときのことを思い出してください。
リーダーが寄り添ってくれることなんて求めていなかったはずです。
寄り添うリーダーが、成長の止まっている状態を正当化してしまいます。
部下に確認するのは、あくまで「情報を吸い上げる」という行為だけです。
「あとで飲みに誘って指導しよう」「2人で飯に行って本音を聞き出そう」
そんなマネジメントはコロナにより失われたと思ってください。
業務中に指摘すべきことは業務中に指摘する。当たり前のことです。
そもそも人間が集団をつくる理由はなんでしょうか。
それは、集団で物事を成した方が得られる成果が大きくなるからです。
メンバーが適切に動けば利益は最大化します。利益を最大化するための方法が集団で動くということです。
「いま自分は何を『恐怖』として感じているのか?」
ぜひ一度それを考えてみてください。
課長であれば「課の成果が上がらないこと」に恐怖を感じなければいけません。
「この瞬間に部下から嫌われる恐怖」が優先されているのなら、それは錯覚です。
「どう振る舞っても何も言われない」「目標を達成しなくても何も言われない」
そんな優しいリーダーの下では、「いい緊張感」が生まれません。
部下が成長せず、チームとして成果が出せなければリーダーは評価されず、いずれは会社から必要とされなくなるでしょう。
遅刻は「姿勢のルール」なので、どう思われようと、遅刻したときは必ず指摘する。
「たまに思い出したかのように詰めるだけでは意味がない」ということです。
言うときと言わないときとでムラがあると、言われたときだけ頑張ろうとします。
常に一定のテンションを保つことが、リーダーには求められます。
部下たちを数人まとめているのであれば、そこでの競争が生まれることが望ましいです。
競争を分かりやすくする工夫も大切です。方法は何でもいいのです。簡単なのは「可視化」することです。
営業であれば「成績を一覧にする」という方法は効果的です。
可視化されていなくても、みんなの心の中には、「自分は今上から何番目だろう」というように順番を気にする気持ちがあるはずです。
可視化されていなくても、みんなの中には「自分は今上から何番目だろう」というように順位を気にする気持ちがあるはずです。
それならいっそ見えるように出してしまったほうがよいのです。
競争から逃れることはできません。
その現実を、メンバー全員に受け入れさせるべきです。
可視化した上で、それでも「人と比べなくてもいい」「自分らしく生きればいい」と考えて生きるのは個人の自由です。
そこに対して「最下位じゃないか」「1位を目指せ」と押し付ける必要はありません。
あくまで数字としての現実を突きつける姿勢がリーダーには必要だと思うのです。
部下の言い訳に対して、リーダーがどのようなコミュニケーションをとるかで、その部下の成長度合いは変わってきます。
反省させることが目的ではないので、言い訳はすべて受け流すようにしてください。
見るべきポイントは、「次にどのような行動をするか」だけです。
具体的に何か行動を変化させない限り、また同じことを繰り返します。
「次はどうしますか?」「具体的にどう変えますか?」
と問い続けてください。
「訪問件数を増やしてみます」「提案するポイントを絞ってみます」
など次の具体的な行動を引き出せるまで、妥協せずに詰めることが大事です。
社内で人気のあるメンバーを評価したり、リーダーと距離が近くて仲の良い部下を評価したりし始めると、チームの結果はついてこなくなります。
いい返事をすることは無意識のうちにクセになります。
がんばりアピールをしてしまう部下に対しては、「日報による管理」に切り替えるのが効果的です。
日報による管理では、数値による管理をします。
「頑張ります」などのプロセスを書く欄を設けずに、数値化した事実だけを書かせるようにしましょう。
ここで大事なのは、「日報は日記ではない」と伝えることです。
目標設定のときにすべきことは、ルール設定と同じく明確な言語化です。
必ず「期限」と「状態」を提示します。
「1週間後までに3件の契約を成約させてください」「来月までに100万円の売上を出してください」
というようにできるだけ数値化します。
目標の設定をしたら、その期限が来るまで、リーダーから確認してはいけません。
目標さえ決めれば、途中のプロセスは部下が創意工夫したり失敗を繰り返したりして試行錯誤するはずです。
特に、入社1年目の新人や部署異動してきた人には、最初はやり方を説明すべきです。
この段階での「見て学べ」「先輩たちの背中を見ろ」という指導は、間違いです。
目標に届かなかったとき、何ができていないかを認識させることが、リーダーの役目です。
「週に20件を訪問して3件を成約させたのですね。目標は5件でしたので、未達です。次はどうしますか?」
「来週は40件訪問するようにします」
と不足を認識させて、その不足を埋めるために何を改善するのかを同時に提案させ、次の目標を設定します。
未達だった場合は、目標の一つ手前のプロセスを加えることがポイントです。
不足しているギャップを受け止めず、「言い訳」が可能な状態になると、人はそちらに逃げます。
リーダーが言い訳のできる状況を潰しておくコミュニケーションを日頃から取っておくことが求められます。
リーダーの仮面によるマネジメント法を実践すると、チーム内に健全な競争が起こります。
健全な競争の下では、勝手に成長せざるを得ない状況になります。
成長していくまわりの人に置いていかれるとマズいという「いい緊張感」が生まれ、結果的に成長が連鎖していくのです。
競争したくなくて成長を諦めた人は辞めていくかもしれませんが、それを食い止める努力は、リーダーには必要ありません。
渡り鳥の群れを見たことはあるでしょうか。
一番速く飛ぶ鳥が先頭になって、それにみんながついていっている。
ここで重要なのは、「先頭の鳥がリーダーではない」ということです。
リーダーは、さらに上から全体を見渡し、指揮する立場にいます。戦闘の鳥は、部下の中のトッププレイヤーです。
そして、先頭の鳥が速くなれば、群れ全体のペースも速くなります。
競争している中で早く成長する部下が一人出てきたら、そこにチーム全体が引っ張られていく。これが理想のイメージです。
伸びる組織は、先頭のメンバーとの差がどんどん縮まっていき、全体が成長していきます。
伸びない組織では、リーダー自らが先頭の鳥となり、トッププレイヤーとしてチームを引っ張っていこうとします。
経験を積み上げていくと、どんどん人間の限界値に集約されていきます。メンバーたちに差がなくなっていくわけです。
そうすると、切磋琢磨が起こり、トップの座が何度も入れ替わるようになり、全体のレベルが上がっていきます。
まだ経験していないことをいくら話されても、部下には伝わりようがないのです。
「この仕事じゃ頑張れそうにありません」「そうか。じゃあどうしたら頑張れるかな?」
そんなやり取りに時間を使う必要はありません。
リーダーは早く目標を与えて「1回やらせてみる」。それがもっとも部下を成長させるのです。
説得も納得も腹落ちも必要ありません。
経営者は、社会からのストレスを受けています。
ストレスがあるからこそ、生き残ろうとします。
その「いいストレス」をきちんと社員にも与えてあげないといけません。
経営者がストレスをすべて吸収して、一人一人に「配慮」してしまうことは、社員の生きる力を奪うことになるからです。
従業員満足度を気にする経営者がいます。「楽しく働いてもらう」ことに力を入れる経営者もいます。
しかし、これらは社員の「今この瞬間」の利益にしかフォーカスしていません。
本質にもとづいた本質的な利益を与える。しかも、今だけではなく未来への利益を与える。それが今後ますます大切になってくるのです。