「デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法」西井敏恭

マーケターの目線としては「どう売るか」ではなくて「買いたい気持ちをどう作るか」。さらに言えば「買いたい気持ちをどう作り続けるか」が重要になってくるのです。

大切なのは1年目の新規顧客が、2年目も継続している割合が50%以上あるかということ。

この「継続率」をちゃんと見ていくのが大切です。

継続率50%以上を維持していれば、お客様がずっと残れば残るほど、売上というものは絶対に伸びていくのです。

全体の売り上げを見て「上がった」「下がった」と一喜一憂するのではなく、まずは新規のお客様がどのくらい売り上げがあるのか、継続顧客からどのくらい売り上げがあるのかというように、売り上げを分解して見ていきます。

売上が伸びていないサイトというのは、たいてい初年度の継続率が50%以下だったりします。

では50%が合格点かというとそうでもなくて、良い企業では60%くらいあったりします。

要は毎年新規のお客様を取りまくらないと成り立たない状態というのは、ビジネスとしてかなり厳しいということです。

長く使ってくれているお客様ほど継続率は上がっていくのです。

1年目から2年目の継続率はやたらと大きく落ちるのですが、2年目は30%、3年目は50%、4年目は60%というように推移していく。

私が最も重視しているのは2回目です。

業界用語で「F2転換」という言い方をします。

この「2回目も買いたい」という体験がすごく重要で、2回買ってくれると3回目まで買ってくれるお客様の割合は60~80%くらいになったりします。

つまり、長期的に1年以上使い続けていただくためには、まずは2回購入してもらうこと。

そのための施策を「F2転換施策」と言います。

本当の新規獲得であるF2をいかに効率よく取るかが大事であるにも関わらず、F0もしくはF1で見ている会社はまだまだ多い。

通常のF2は新規に近いという考え方を踏まえると、私ならF2までを新規獲得チームに含めるようにしますね。

私はF2転換では大切なものが3つあると思っています。

それは「タイミング」「商品」「コミュニケーション」です。

F2では施策も大事ですが、入り口になる商品がとても大事です。

どんな会社にも、派手じゃないけど実は効く商品がある。

そういう商品を体験すると、お客様は「あ、違うな」って実感するんですよね。

ここから読み取れるのは、1回目の購入のときにいかにスペシャルな体験を作り出すかが大事だということです。

「何が1回目に売れたら、次につながりやすいんだろう」ということは、それほど難しい分析をしなくても分かります。

広告ではそういう商品を中心に露出します。

「商品が大事」というとき、ひとつ注意しておきたいのは「いい商品を作るのは当たり前」だということ。

商品は良くて当たり前。大事なのは「その商品は誰にとってどのようにいいのか」をちゃんと担当者が理解して、お客様に伝えられるかです。

言葉もそうだし、使ってみたときの体験もそうだし、商品を届けるときの箱ひとつとっても違ってくる。

その全部がひとつの「体験」なのです。

買う前から実際に使ってみるまで、すべての体験が「また買いたいな」と思えるものでできているかが大切なんです。

まずはタイミング。

いかに熱いうちにコミュニケーションをとるか。

その次が中身です。

申し込んだ直後というのは、お客様にとって不安でもあり、楽しみでもある時期です。

だから、不安を払拭して楽しい要素を増やせるようなコミュニケーションができれば、いい印象や信頼につながります。

私がよくやっているのは、はじめて利用してもらったお客様に「この度は登録して頂きありがとうございます。弊社はこのようなサービスをしている会社です。個人情報は大切に扱いますのでご安心ください。発送の手配ができましたらすぐにご連絡します」と言う内容をすごくリッチなメールで送ること。

発送手配ができた時点で、発送前に「手配ができました」と伝えるし、発送出来たら「発送完了しました」と連絡する。

届いたときに「お手元に商品は届きましたか?もし不備があればすぐに交換しますので」という連絡をする。

最初にこういうことをきっちりやると、お客様にちゃんと誠意が伝わります。

ここまで繰り返し「リピートが大事」と説明してきたわけですが、リピートで大切なのは、実は「入口」です。

最初にそのブランドで味わったお客さんの体験というのが、その会社やお店のすべてになります。

だからまず商品が大事だし、通販だったら商品が届いたときのパッケージや、その後に出てくるコミュニケーションなどの体験も重要になります。

購入ハードルを下げた場合は、少しだけ「体験のハードル」を上げることが大切です。

たとえば、サプリメントの無料サンプルを提供した場合は「モニターアンケートに回答すること」を条件とする。

これによって、本当に必要としているユーザーだけがその先のステップに進むことができます。

私が新規プロモーションを設計する際に、最初に改善するところがあります。

それは、商品の注文完了メールです。

モール系のショップの場合、文字だけの、誰も読まないような注意書きがいっぱい書いてあるメールが送られてくることが多い。

そういうメールを、いかに自社が伝えたいことに変えるか。お客さんの不安を解消し、期待している情報に変えていくか。

ここで私が強調しておきたいのは、「SEMやアフィリエイトは最低限やっておいたほうがいい」と言いつつも、「この2つはかなりのポテンシャルがあるはずなので、しっかりとやり切ってほしい」ということです。

YDNやGDNも進化していますが、SNS広告の方が「そんな商品があるなんて知らなかった」という人のところにメッセージを届け、使ってみたい気持ちにさせるのが得意なのかなと思います。

経験値で言うと、優先度が最も高いのはアフィリエイト、SEMです。

ECではダイナミックリターゲティングのクリテオも上位に入ります。

そして現在は難易度が上がっていますがSEOがあります。

ウェブ担当者全員が、自分の日々の業務の目標と達成状況を知るために各種データをチェックすることができます。

デジタルマーケティングに関わる人は誰でもこうしたデータを見ることができるよう、アクセス解析ツールの集計項目を整備したり、アクセス権を付与しておくことが大切です。

同じ商品、同じ価格のときに「これがほしい」と選んでもらえる理由というのがブランド、ブランディングです。

アマゾンは商品が届くのが速いこともブランドだと言いました。

だからアマゾンは配送に対してどんどん投資をしています。

デジタルマーケティングはいかにリアルタイムの情報をタイミングよく提供するかも重要なことのひとつ。

サイトの改善も日々行うべきだし、SNSの投稿は毎日そのときその場所で起こったことを共有したほうがユーザーに好まれます。

まとめ

・企業の売りたい気持ちは見透かされる時代になった。これからは「どう売るか」ではなく「買いたい気持ちをどう作るか(作り続けるか)」が大事。

・デジタルマーケティングにおける優先度の高い施策は以下の通り。最重要なものからやり切ることが大事👇

【最重要】SEO・SEM・メルマガ・アフィリエイト・スマホ最適化・アクセス解析

【次に実施】メールマーケティング・SNS

【進化】ビッグデータ・AI・VR

・広告は「どの媒体」ではなく「誰に届けたいのか?」をベースに考える。

・デジタルになったことの本質的な価値は3つ。「検索性」「双方向性」「即時性」。顧客が検索し比較できるようになり、顧客から情報を発信できるようになり、顧客とリアルタイムなコミュニケーションが可能になった。

・目の前の数字を追えるだけではなく、自社の売上構造・顧客構造を理解して、どんなときにどんな施策を打つべきかを判断し、ビジネスを大きく成長させられる人がデジタルマーケター。

・デジタルマーケティングにおける優先度👇

①自社ビジネスの現状を整理すること

②F2施策(2回目の購入)

③2回目以降のお客様のリピート

・1年目の新規客が2年目も継続している割合が50%以上あるかという「継続率」を見ていくことが大切。大体2年目以降の購入回数は前年の2倍以上になる。そのため継続率50%をキープできていれば売上は必ず伸びていく。

・売上全体ではなく、新規客と継続顧客に分けて解析することが大事。

・継続顧客を増やすことがとにかく大事。新規に依存したビジネスは厳しい。

・継続年数が長くなるほどお客様の離脱率は減っていく。継続顧客が増えるほど売上の土台が盤石なものになっていく。

・F0(認知)⇒F1(新規購入)⇒F2(2回目の購入)⇒F3(3回目の購入)ではF2が一番大事。F2までいったお客様は離脱率が大幅に減る。この数を増やす施策を「F2転換施策」と呼ぶ。

・同じF2でもF1がクーポンや割引やお試しセットでの購入だった場合、F3以降がリピート扱いになる。

・F2転換の壁は高いがF2転換率を上げるのが最も売上のインパクトが大きい。F2を頑張るのが効率が良い。

・F2転換で大切なものは3つ。「タイミング」「商品」「コミュニケーション」。この中でも一番大事なのがタイミング。

・自社の商品はどの期間までならF2転換しやすいかを分析する。F1からできるだけ近いうちに施策を実施する。

・F1から30~60日以内に再購入しない場合、F2転換率は大幅に下がる。

・リピートには入り口になる商品が一番大事。F2転換率の高い商品をF1にもってくる。

・F1でいかにお客様にスペシャルな体験を作り出せるか。派手ではなくとも効果を実感しやすい商品。ユニクロならヒートテック。

・F2転換しなくて困ったときはまず入り口の商品を見直す。

・良い商品を作るのは当たり前。大事なのは誰にとってどのように良いのかを担当者が理解してお客様にきちんと伝えられること。

・言葉も使ってみたときの体感も商品が入っている箱もそのすべてが一つの「体験」。買う前から使ってみるまでのすべての体験が「また買いたい」と思えるものでできているかが大事。

・まずはタイミング。いかに熱いうちにコミュニケーションをとるか。その次が中身。申し込んだ直後はお客様にとって不安でもあり楽しみな時期。ここで不安を払拭して楽しい要素を増やせるようなコミュニケーションをとる。

・自社のターゲットに誓い友人知人にサービスを利用してもらい感想を聞く。マーケティングに関してはお客様の気持ち・感想がすべて。

・リピートのお客様にさらに使い続けてもらうための施策を「ロイヤルティプログラム」と呼ぶ。お客様が離れられない仕組みを作る。限定商品や優待サービス、ポイントなど。ANAでマイルを貯めている人はJALに乗らない。

・広告費は想定期間内に回収できそれ以降利益が出る額であればいくらでも構わない。売上の10%などという目安はない。データを分析して広告費をいくらまでかけられるかを知ることが大事。広告は投資。

・広告を打つときに考えるべきは「この商品を売りたい」ではなく、「どの商品で初めてお客様と接点を持ちどのような体験をすれば自社のファンになってもらえるか」をプロモーションの中でしっかりと設計すること。

・リピートしやすい商品をいかにスモールサイズで体験してもらうか。初回購入のハードルをとにかく下げる。

・購入ハードルを下げた場合は体験のハードルを上げる。サプリの無料サンプルを提供⇒アンケートに回答するを条件に。本当に必要としているユーザーだけが次のステップに進められる。

・最初に改善すべきは「商品の注文完了メール」。ここでしっかりとコミュニケーションをとってお客様の不安を払拭し期待に応える。最初に送る何通かのメールが大事。

・最低限やるべき広告は「アフィリエイト」と「SEM(リスティング)」。次にやるべきは「SNS広告」と「ディスプレイネットワーク広告(GDN)」。特にアフィリエイトとSEMはポテンシャルが非常に高いのでしっかりとやり切ることが大事

・Webサイトはゴールを明確にする。初めての訪問者と何度も利用しているリピーターにとってそれぞれ使いづらい手順はないかを考える。サイトを改修する際もそのゴールがどこにあるかを明確にした上でやる。

・トップページ担当者は「直接」から流入しているユーザーのCV率を上げることを目標にする。SEO担当者はSEOの「一般」での流入とCV率のアップを目標にして商品ページやカテゴリーページを改善する。メール担当者はメールからの購入数を最大化することを目標にして日々のメール運用を設計する。

・サイトの数字を分けて管理してPVに一喜一憂しない。

・Web担当者全員が日々の業務の目標と達成状況をチェックできるようにする。

・ブランドとは同じ商品・同じ価格のときに選んでもらえる理由のこと。Amazonは商品が届くのが速いこともブランドの一つであり、配送に対してどんどん投資している。自社のブランド要素に投資していく。